イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
「離婚する時、トラブルだけは避けたい。だから、俺に好意を持って無さそうなお前を選んだ」


他の女性従業員と言えば、彼が店に来ると仕事をそっちのけにして色目を使う。逆に彼を特別扱いせず、他のお客様と同等に接客する私が彼の目には目立っていたのか。


「私は別に好意がない・・・」


「お前も俺がスキなのか?」


黒曜石に瞳が私をジッと見る。


彼の一途な視線に耐えられず、顔を俯かせた。


「この店のコーヒーはマズいな。やはり、『ヘンリーズコーヒー』が俺の口には合う」


「本当に『ヘンリーズコーヒー』の味がスキなんですね」


「留学していたスペインの行きつけのバールで飲んでいたコーヒーに味が似ているんだ」


「へぇー」


私はミルフィーユをフォークで切り分けて口に運んだ。


「俺の分もやるよ」


「ありがとうございます」


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