イノセントラヴ~不実な社長と契約結婚~
「いただきます」
俺は豆腐の味噌汁を最初に啜った。

「この味噌汁は菜穂様が作りました」

「そうか…どうりで少しだけ味が違う。程よい味だ。吹雪の作る味噌汁はしょっぱいからな」

「菜穂様は料理が得意だそうです。これからは美味しい手料理が食べられますね。社長」

「ゴチャゴチャ言ってないで、俺のスーツを用意しろ」

「社長に言われなくても用意致します」

吹雪はウォークインクローゼットに行ってしまった。

俺と菜穂の二人っきり。

目の前に座る菜穂も黙々と朝食を食べていた。


「いつも寝る時はパジャマを着ずにパンツ1枚で寝るタイプだ」

「分かりました」

「今まで、俺の身の世話は吹雪がして来た」

「それは、吹雪さんから訊きました」

「じゃ話が早いな。これからはお前が俺の身の回りの世話をする。いいな」

「はい」

「で、昨日の兄の話ですが・・・」

「昨日言った通り、俺も兄貴の行方は知らない」


「では、兄は何処に?」

「さあな」
俺は曖昧に返事をして、卵焼きを頬張った。


「卵焼きの甘さも丁度いい。卵焼きもお前が焼いたのか?」


「はい」


「料理は満点に近いな」






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