気になる!
校長は鍵の掛かっているケースを開け、白手袋
をした手で本を取り出す。


「初版なんですよ。」


「手に取って見ても構いませんか?」


校長は、どうぞどうぞと白手袋を貸した。
客人は緊張の面持ちで一頁ずつめくっていく。


「…はぁ。こうして手に取る事ができるなん
て。教科書に載っててもおかしくないでし
ょう?」


「まさかそこまでは。」


おべっかだと分かっていても、嬉しい。
校長は熱心に頁をめくる姿を目を細めて見守っていた。
すると、おや、とばかりにそれまで動いていた
手が止まり、表情が曇る。


「どうかしましたか?」


この時はまだいい気分だった。
一頁、丸々破かれているのを見るまでは。
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