ずっと…………

真洋side

 やっと解放されたぁぁぁぁぁ‼

「よしっ‼」

俺は誰もいない廊下で
1人ガッツポーズを決めた。
担任と生徒指導室に入ること90分間
入学式などの行事の大切さや
その他もろもろ、長々と話を聞かされた。
早くしねぇと暁に怒られる。
俺は足早に教室へと向かった。


「ん?」

暁しかいないハズの教室から
何故か話声が聞こえてきた。


「そうだったの⁉」

「おぅ」

「しっ、知らなかったです」

「俺の情報網ナメんなよ」


どうやら香代がいるらしい。
香代は中学の時、俺と暁がよくつるんでいた 女子で、素行不良だった俺達に
物怖じすることなく話かけてくるような
胆の据わった女だ。
そして、もう1人の声は…………。
俺は深呼吸をしてからドアを開けた。


「悪い、遅くなった」

「おぉ、真洋。随分遅かったな」

「あっ、真洋。おつかれー」

「おっ、お疲れさまです」

「どうも。えっと…………」

「その子はね
 私の友達で、木田 結実って言うの。
 で、あっちが武本 真洋って言って
 さっきの話に出てきたもう1人の方」

「木田 結実です。
 よろしくお願いします」

「こちらこそ。
 俺は武本 真洋です」

「「……………………」」

「真洋も座ったらどうだ?
 それとも、もう帰るのか?」

「いや、ちょっと休ませて。疲れた」


俺はとりあえず自分の席に座った。


「えーと、木田さんだっけ?」

「えっ、あっはい‼」

「結実、そんなに緊張しなくて大丈夫だよ
 真洋はちょっと目付き悪いけど
 すごく良いヤツだから」

「香代、目付き悪いは余計だろ」

「だって事実じゃん」

「うるせぇよ」

ガンッ


俺は
隣に座っている香代のイスを蹴った。 


「ちょっと~、結実が怖がるから止めてよ」

「あぁ?」

「なに? なんか不機嫌じゃない?」

「なんでもねぇよ」


俺は机に突っ伏して
香代の視線から逃れようと試みる。


「怪しい」

「なんでもねぇって」


俺が断固として話そうとしないでいると
ターゲットを変更したようだ。


「暁、なんか知ってる?」

「クククッ」

「知ってるなら教えてよー」


その言葉を聞いて俺は慌てて顔を上げた。


「絶対に言うなよ?」

「はい、はい」

「えぇ~」

「てか真洋、結実ちゃんに
 何か言いかけてなかった?」

「んあ? 忘れた。それよかお前
 また、ちゃん付けで呼んでんの?」

「悪いか?」

「別にー」

「ふ~ん」

「なんだよ」

「いや。
 んじゃあ、そろそろ帰るか。
 お前ら飯どうする?」

「私は結実と食べて帰るから、ねっ」

「うん」


木田さんが香代に尋ねられて
コクンと頷いた。


「じゃあ
 俺らもどっかでテキトーに食いますか」

「だなぁ」


それぞれが自分の荷物を持ち教室を出た。


「じゃな、香代と結実ちゃん」

「また明日ね」

「失礼します」


俺は2人に手だけ振った。
俺も暁みたいに
誰とでも普通に話せたら良いのに………









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