中毒性アリ!?副編集長に手なずけられました
君と言う名の優越感


自らとんでもない死亡フラグを立ててしまった。
真塩さんから貰った合鍵を見つめて、私は今、冷や汗だらだらのままトイレの個室にこもっている。

あの契約を交わしてから一週間後、明日夜暇? というラインが真塩さんから届いた。
暇ですが……という煮え切らない返事をすると、じゃあ明日朝ロビーで会ったら渡すものがある、と私の意向を完全に無視した返事がきた。
そして、偶然にもロビーで会ってしまったすれ違いざまに、この鍵を貰った。
先に入って待ってて、と、彼はぼそっと呟いた。

どっと冷や汗が押し寄せた私は、こうして個室トイレに籠りなんとか精神を落ち着かせようとしているのだ。
鍵を握りしめたまま便座に座っていると、扉が開く音と女性の高い声が聞こえてきた。

「ほんっと今日もかっこいい」
「薄いグリーンのシャツが似合う人なんてこの世に真塩さんしかいないよね本当」
ま、真塩さんの話題だ……。
恐らくこの声は、一週間前コンパではやく帰ったあの白木さん達の声だ。
一際キラキラしていて可愛いので、彼女たちのことは(とくに白木さん)すぐに覚えた。

「どうする? 実は真塩さんに同棲してる彼女がいたら」
聞き耳を立てている訳じゃないけれど、どうやっても彼女たちの声は聞き取れてしまうし、出るタイミングも逃してしまった。
「真塩さん少し潔癖っぽいし、同棲とかできなさそう」
「あー、分かる。いつもシャツに皺ひとつないし、デスクの上綺麗だもんね。広告の小松さんのデスクが汚いの注意してたし」
潔癖ってバレてますよ真塩さん……。
「でももしいたとしたら、私もっとエンジンかかっちゃうかも」
「略奪愛ってやつ?」
「そう、私そっちのが燃えんだよね。ていうか真塩さんガチで狙ってますから」
「さすが白木、恐ろしい女だね」
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