貴女へ
ただいま

大貴

光に包まれた私たち。目が覚めると図書室にいた。そこには、司書さんと結実と、大貴がいた。
「玲実…っ!」
大貴は私を見つけるなり大慌てで走ってきた。そして、ぎゅっと抱きしめてくれた。優しい温もりだった。
「大貴…」
私も大貴を抱きしめかえした。大きくてあたたかい背中は私を安心させた。
「…無事で良かった……本当に、良かった…」
大貴が敬語じゃない…それは、距離が縮まったみたいで、少し嬉しい。
「お父さん…ただいま。」
自然に、スって言葉が出てきた。
「まったく…貴女はいつもそう心配ばかりかけて。」
「ごめんなさい…」
大貴はもう何も言わなかった。ただ、その手で私の頭を撫でてくれた。
「キキョウは…っ!あの子はどうしたっ!」
ふと、司書さんの声がした。
「貴教は…魔界に留まった。」
正直に言った。
「そんな…っ!」
「貴教は、」
「お前は…国もキキョウも……私から大切なものをどんどん奪っていくんだな…」
「それは…違う。」
「違わないっ!」
強い、大きな声だった。その言葉の意志の強さに私は足が怯んでしまった。
「信じたくないなら、自分で見にいけば?」
直樹がそういうと、司書さんはつまづきなから走って魔界へと行ってしまった。
そして翔は何かの呪文を唱えた。
「…これでこのゲートは封印されました。二人が戻ってくることはもう当分はないでしょう。」
佐藤さんが優しい声で教えてくれた。
「解った…」
貴教にもう会えないのか…ちょっと寂しい。
…いや、またいつか私は彼処へ戻る。その時までの別れだ。
「後はお前だけやな。」
翔は、結実を睨みつけながら言った。
「玲実。私は…」
「結実は…?」
「私たちはもう友達として居られない…」
私は何も言えなかった…言いたくなかった。ただ、黙って結実の言葉を待っていた。
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