婚約者はホスト!?③~夫婦の絆~
彼の正体

『なっちゃん 安心して 僕があの男のことなんて忘れさせてあげるから…。』

春君の言葉の意味を、朦朧とする意識の中で考えていると、急に私の体がふわっと浮いた。

とうやら 春君に抱き上げられたようだ。

春君の胸元から男ものの香水が漂ってくる。

圭司とは違うその匂いは、ますます私を不安にさせる。

春君はベッドの上に私をそっと下ろした。

私は目を開けて起き上がろうとしてみたけれど瞼が重くて、体も思うように動かない。

「なっちゃん 愛しているよ。」

そう春君は呟いて、私の耳たぶを口に含んだ。

そして、チュパチュパと音を立てながら、私の耳を吸い上げていく…。

一体どうしてこんなことを…。
愛してるって、どういうこと…?

それにしても気持ち悪い…。
あんなに昔は、彼のことが好きだったのに、今となっては嫌悪感しか抱けない。

もうやめて…
そう叫びたいのに、声が出せない。

圭司以外の人にこんなことをされるなんて…。

だんだんと春君の息づかいが荒くなり、服の上から私の胸を揉みだした。

いや…!
このまま 春君に抱かれてしまうなんて死んでも嫌だ。

私は、力を振り絞って春君の胸を思い切り押しのけた。

春君は突然の私の抵抗に驚いたのか、ピタリと動きを止めた。

重たかった瞼を少しずつ開くと、馬乗りになって私を見下ろす春君の顔が見えた。

「なんだ 起きちゃたんだ…。やっぱり あの薬 あんまり効かないんだね…。」

そう言って、春君は不気味に笑った。
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