終わらない恋
本当は知らない人についていくのはよくないと思う。
けれど、こんな綺麗な声で歌う人に悪い人はいないと思う。

「魁斗さん、私、家出してきたんです」

呟くように言葉を零すと魁斗さんは少し驚いた顔をした。でも、すぐに笑顔になって

「よかったら、客間があるから貸してあげるよ。客間って言うほどでもないけど」

そう言って案内してくれたのは、殺風景な部屋だった。
和室で机と座布団があるくらい。

「あ、男と2人大丈夫?事務所に仮眠室あるからそこでもいいけど」


「大丈夫です。ありがとうございます」

私は微笑むと部屋に入った。
魁斗さんは頷くと扉を閉めて出て行った。

さて、明日はどうしようか。
畳に寝転がって天井を見ながら考える。
でも、やっぱり何も思い浮かばない。
行くあてなんか最初からなかった。
小さく「はぁ…」とため息を吐いて目を手で覆った。
疲れていて眠い。もう夜だし仕方もないが。

私は目を閉じた。
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