幸せの定義──君と僕の宝物──
リュウはハルの写真を眺めながらタバコの煙を吐き出して、もう一度メール画面を開いた。


“早く帰ってハルの作った飯食いたい。
写真、かわいく撮れてた。
オレもハルの写真見ながら寝る。
おやすみ、ハル。”


リュウはあまりの恥ずかしさで震える指で文章を打ち、思いきってメールを送信して、大きなため息をついた。

(つ…疲れた…こんな事したの初めてだ…。)

今まで、まともな恋愛をした事がなかった。

彼女と長電話やメールをしたり、待ち合わせてデートをしたり、記念日のお祝いやプレゼントをしたり、お揃いのアクセサリーを身に着けたり…。

世間のカップルが当たり前のようにしているのに自分にとって経験のなかった事を、この歳になって初めて、ハルと少しずつ経験している。

(なんか…教えられてんのはオレか?)

「そんなに穴が開くほど眺めて…ハルちゃんいなくて寂しいのか?」

リュウは突然後ろから声を掛けられ、驚いて椅子からずり落ちそうになった。

相変わらずハルの写真を眺めながら、ぼんやりタバコを吸っていたリュウの後ろに、いつの間にかシャワーを終えたユウが立っていた。

「いっ…いつの間に…。」

「え?ついさっき。シャワーお先。」

「お、おぅ…。」

「おやすみメール送ってあげた?」

「……一応…メールはした…。」

「好きだよ、とか。」

「そんな恥ずかしいメールするか!!シャワー浴びてくる!!」

リュウは赤い顔をしてバスルームに向かいかけたかと思うと、慌てて戻って来てテーブルの上のスマホをポケットに入れた。

スマホの画面には、満面の笑みを浮かべるハルの写真が写し出されていた。




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