きみの涙に、名前を。

新学期になり、いつもの待ち合わせ場所で結衣を待った。しかしいつまで経っても結衣は来なかった。結衣は夏祭りのことを怒っているのかもしれない、そう思った橋本は急いで学校へむかい、結衣のクラスに行った。

「結衣!」

息を切らして結衣の名前を叫ぶ橋本に、結衣のクラスメートたちは戸惑った。

ついさっき、結衣がアメリカに行ったことを聞き、クラス中が騒然としていたからである。

様子がおかしいと思った橋本は結衣がいつも一緒にいた子たちの元へむかった。

「結衣はどうしたんだ…?」

「橋本くんも知らなかったんだね…」

「どういう、こと?」

「結衣、お父さんの仕事の都合でアメリカに行ったって……」

(アメリカ…?おいおい、冗談はよせよ…)

そう言って笑おうとした橋本だったが、周りの雰囲気が嘘ではないと物語っていることに気がついた。

その瞬間、橋本の頬に涙が伝う。まだ何も言えていないのに。夏祭りの日ごめんなって、放課後デートしようって、結衣のことが好きだって…

その様子に周りはざわめく。そんなことを気にすることもできず、フラフラと教室を出て、保健室へむかった。


橋本の真っ青な顔を見た養護教諭はベッドを貸してくれた。幸い、保健室に生徒はいなかった。しばらくすると、養護教諭は出て行った。

結衣は俺に相談も報告さえもしてくれなかった。
(結衣は俺を何だと思ってたんだろう…)
橋本の中には後悔と疑念が残った。


「くっそ!なんでだよ結衣っ!!!戻ってきてくれよ…!」

保健室のベッドを叩きながら泣き叫ぶ。見てくれなんてどうでもよかった。どんなにダサくても結衣が自分の元に戻ってきてくれれば、それでよかった。

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