腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ

その13。ツカサ

ウサギは楽しそうに水族館を見て回る。
僕と手を繋いだままだ。
僕はウサギに引っ張られ、大きな水槽の前に立つ。
口を開いて、魚の群れが形を変えて泳いでいるのを
見上げるウサギの顔を観察する。
見開かれた大きな瞳。嬉しそうに微笑む唇。
可愛い。
僕は思わず、後ろから腕を回して、そっと抱きしめる。
思っていた以上に柔らかくて、温かい。
固まるウサギ。
ゆっくり腕を解いて、手を引くと、
ウサギは大きく息を吐いて、声を出さずについてくる。
怖がらせたかな?
「お腹すいた?」と顔を覗くと、真っ赤になった顔でうなづいた。
まあいい。僕はちっとも急ぐつもりはない。


水族館をのなかのレストランで、ハンバーガーを食べる。
椅子に座ったら、少しずつ、落ち着いてきたみたいで、
「菅原先生」と呼ぶので、僕はあからさまに顔を背ける。
「ツ、ツカサさん。…いつもデートの時はこんな感じですか」と聞くので、
「こんな感じってなに?」とニッコリ笑顔をみせると、
「えーと、…す、スキンシップしたり。……」スキンシップねえ。ハグって言って欲しい。
「嫌?」と顔を覗くと、顔を赤くして、
「…嫌。っという訳では…」と言い淀む。
「良かった。こんな事で嫌がられたら、この先思いやられる。」と僕が微笑みながら言うと、
「この先?」と驚いた顔を見せるので、
「この先。抱きしめあったり、キスをしたり、服を脱いで…」と言っている途中で、
「す、ストップ!」と真っ赤になって僕の言葉を遮る。僕は笑って、
「ウサギは僕が怖いんだ。」と聞くと、思いがけず
「こっ、怖くありません。」と言い切るので、瞳をじっと見つめると、
「…怖くなんてありません。」とうつむいた。

ふうん。

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