Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~

現実

朝ご飯を前に、箸を置いた。

「食べてないじゃないの」

お母さんが咎めるように言った。


「気持ちが悪い…」

「ええ?」


お母さんが、私のおでこに手を当てた。


「熱はなさそうね。お味噌汁だけでも食べて行きなさい。あと、魚と野菜」

「ぜんぜん、味噌汁だけじゃないじゃん」

沙奈が口を挟んだ。



「当たり前よ。栄養を考えて作ってあるんだから」



箸が手から滑り落ちた。


みんなが私を見た。


拾う気になれなかった。



「本当に具合が悪いの?」

お母さんが言った。


「朝から、こんなに量を出す家ないよ」

父さんが言った。


「普通、パンだけだったりさ」

「そんなの外国の話よ。あんなものはダメよ」


お母さんが、箸を拾った。

私は立ち上がった。


「もう、行く」

「ダメだってば!」


お母さんが新しい箸を持ってきて、ぎゅっと私に握らせた。
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