ナックルカーブに恋して
「いったい、どういうつもり?」
私はテーブルに置かれたアイスティーの氷が溶けるのを見つめながら、彼に尋ねた。
「どういうも何も、瑠衣先輩が逃げるのが悪い。」
「逃げてなんか…」
「メールの返事がないのは、忙しかったせいじゃ無いはずです。」
彼の言う通りなので、言い返す言葉が見つからない。
あの衝撃発言の後、咲さんとスポーツ誌の二人は逃げるように撤収していった。
「高野ちゃん、もう今日はこのまま上がっていいから。カメラは私が持って帰るし。ありがと。よかったら、ゆっくりしていって。ここ、三時まで押さえてあるから。ドリンクも何でも好きなもの注文して。私のおごり。じゃ、お疲れさま~。」
一気に早口でまくしたて、私の手からカメラを奪い取ると、他の二人と一緒にニヤニヤしながら、あっという間に去って行った。
そして、倉木君と二人っきりで取り残された。
「先輩、約束はちゃんと守って下さい。」
先ほどから彼は立ちあがり、窓際に背を預けて、私をまっすぐに見つめている。
「何のこと?」
白々しくも、忘れた振りをした。
動揺で声が少し震えたことなんて、どうでもいい。嘘だと分かっても、しらばっくれることが大切だ。