蒼いパフュームの雑音

「そうだ。紅ちゃん、これ、すんごいいいよ。」

そう言ってカウンターの上に出されたのは、今朝撮影した数枚のポラロイド写真だった。

「これ…なんで?」
「さっき、凛くんと京果ちゃんに会ったんだよ。そうしたら今日撮影だって聞いてさ。いやー、僕の目は間違えてなかった。色々自信付いたんじゃない?」
「自信。…自信か…」


メガネの奥で優しく微笑んでいた。

「このままモデルになっちゃうのもいいんじゃない?紅ちゃんスタイル良いし、本当にいい女だよ。うん。」

ポラロイドを並べながら緋色は言った。

自信なんてない。
全てにおいて、自信なんて持てない。

でもこうして緋色は私の自信を引き出してくれる。
何だか魔法使いみたいだ。

魔法に掛かった私は、優しい眼差しの中、色々な話をした。

好きな音楽のことや、高校生の時バンドをやっていたこと。
六本木のクラブで働いている事や、すぐ近所にある家の事。

私を知って欲しくて、ずいぶんとべらべらと喋ってしまったが、緋色は嫌な顔せず、頬杖をついて終始にこやかに聞いてくれた。
< 30 / 56 >

この作品をシェア

pagetop