夢中にさせてあげるから《短編》番外編追加
あり得ない。

「お前の、真面目で誰に対しても分け隔てのないところが好きだ。このマンションに住んでる若い夫婦の荷物を持ってやったり、老夫婦の小さな文字の書類に眼を通してやったり。泣いてる子供の目線に合わせて身を屈めて、一生懸命話を聞いてやるところも。仕事の電話だって聞いたことがある。真っ直ぐで、いつだって真剣な乃愛が好きだ」

いつの間に、そんなに見られていたんだろう。

いつの間に。

愛児が切なそうに微笑んだ。

「……本当は直ぐにでも返事が聞きたい。けど俺、ずっと待ってるから、いつか返事を聞かせてくれる?夢中にさせたかったのに……随分カッコ悪いけど、待ってるから」

私は頷いた。

「うん、ちゃんと考えるから、待ってて」

私は一生懸命笑った。

「でも、夕方の唐揚げは、教えてくれる?」

「……いいよ」
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