夢中にさせてあげるから《短編》番外編追加
「…………!」

私は、息を飲んで固まったままの愛児を見上げて、目一杯微笑んだ。

「ね?夢中にさせてあげるから。私が愛児に夢中なくらいに。……愛児、大好き。凄く大好き」

私は愛児の唇にキスをした。

勇気を出して、以前愛児にされたみたいに、私は彼にキスをしてみたのだ。

けれど愛児は何の反応も示さなかった。

「…………」

「……愛児?」

も、もしかして……キスが下手すぎて呆れているのだろうか。

怖い。

急に心細くなって、私は愛児にしがみついた。

「……気が変わった?やっぱり私じゃダメ?なんか言って」

なにも答えない愛児を目の前にして不安になり、私は俯いた。

「……だ」

その直後、愛児が何か言ったけど私には聞き取れなかった。

「……なに?もう一回言って」

愛児が私の腰に両腕を回した。

「……生意気だって言ったんだよ」

「え?」

「俺、まだ途中なんだけど」

私は少し眉を上げた。

「なんの途中?」

愛児が不敵な笑みを浮かべる。

ああ、その顔が何とも魅力的でグッとくる。

「お前を、夢中にさせてる途中」

「えっ?!」

急に、愛児が私を抱き上げた。

「あ、愛児っ」

愛児は、慌てる私を甘く睨んだ。

「俺を我慢できなくしたお前が悪い」

「あの、だけどっ」

愛児は私の唇にキスをして、フウッと笑った。

「……凄く、凄く、優しくするから」

「愛児……っ」

ああ今夜も、あの日のように空いっぱいの星が輝いているのだろうか。

早く愛児に会いたくて、早く愛児に触れたくて、私は不覚にも大好きな夜空を見上げてはいなかったのだ。





★ おわり ★



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