鬼社長のお気に入り!?
『私、愛理とはずっと友達でいたい。愛理が悩んでた事に気付けなかった自分も馬鹿だけど――』


「ち、違うの! 美智には迷惑かけたくなかったし……」


『迷惑かけてもかけられても、友達だったら許せる。愛理が変に気を遣ってなにも話してくれなかったことに怒ってるの』


「……ごめん」


 美智の言葉に胸が熱くなる。スマホ片手に往来の中、私は鼻をすすった。


『も~! 別に泣かせたくて言ってるんじゃないのよ? それに今回のことでうちの会社も生まれ変われたし、八神さんには本当に感謝してる』


「え……? 八神さん?」


『そうよ、失った信用を取り戻すにはかなりの歳月がかかる。実際、契約してる企業から何件も契約解除を申し入れされて、もしかしたら会社も立て直す前に潰れるかもしれない……』


「そんな……」


『でもね、そんな時、八神さんがうちの会社に支援金としてかなりの融資をしてくれたの、そのおかげでなんとか持ちこたえてる状態』


 え……? 八神さん、そんなこと一言も言ってなかったよね――?


 知らされてなかったということは、八神さんいとって私は知る必要がないということだ。


『桐生親子が一掃されてうちの会社もいっときはお通夜みたいに暗い雰囲気だったけど、なんとか頑張っていけるようにするわ、実はね……私も何度か会社辞めちゃおうかなって考えてた時もあったけど、こういう会社だからこそやり甲斐があるってものじゃない?』


 美智は強い。そういうところ、昔から憧れてた。きっと電話の向こうではキラキラと顔を輝かせているに違いない。


『さぁ~ってと、そんなこと言っても今夜はクリスマスだし! これからちょっと飲んでくるわ、じゃあね!』


 相変わらずの美智に私は人知れずほっとする。


 わっ! いっけない、もうこんな時間――!


 電話を切ってホーム画面に映し出された時刻を見てぎょっとなる。私はスマホをバッグに押し込むと、八神さんを想いながら小走りに駅に向かった。
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