1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

 それは昨夜、神野くんが帰った後のことです。

 弟の智希と妹の望亜をお風呂に入れてから、私はお母さんに前髪を切ってもらうように頼んだんです。

 ずっと、過去から目を背けるために伸ばし続けて顔を隠して前髪。
 でも、神野くんに私の過去をお話してから、なんだか隠れているのがバカバカしくなってしまったんです。

 なので、その象徴とも呼ぶべき前髪をバッサリ切ってしまいました。

 約1年ぶりとなる前髪さん。それはそれは違和感でした。
 朝起きたら前髪がなぜか真横にはねていたので、お母さんに笑われました。それは豪快に。

 素顔をさらして外を歩くのは緊張しましたが、先ほどから突き刺さってくる視線に最早後悔しかありません。

 前髪、切らなきゃよかったです…。
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