1人ぼっちと1匹オオカミ(上)

報酬


「よもぎ、酒飲もうぜ」

「俊也さん、日本の法律では20歳までお酒は飲めないのです」

 智希と望亜がお部屋に連れて行かれると、少しだけ騒ぐのがいつものことです。
 早速酔っぱらった俊也さんが私の肩に腕を回してきました。う、お酒くさ…。

「俊也、鬼が出るからやめとけ」

 剣人さんは酔っている感じはないです。颯人さんも少し顔が赤いものの、穏やかに笑っています。

「そういえば、よもぎちゃん。あの情報伝わったかな」

「あ、はい。今日取引をしてきました。颯人さんのおかげです」

「俺も偶然だったから、気にしないで」

 今日の取引の情報提供者は颯人さんだったのです。
 医療関係の知り合いに総当たりしたものの、やはり見つからず頭を抱えていたところに颯人さんが教えてくれたのがドナーの家族でした。メールでやり取りして、電話もしました。

 大切な娘さんがもう意識が戻らないと宣告され、ちょうどドナーを探し始めようとしていたそうです。
 そちらとの取引もして、何とか依頼者とつなげました。

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