あの空を自由に飛べたなら
出会い




ただただ、こわかった。

何をされたわけでもなく、何かがあったわけでもないのに、自分で勝手に周囲の視線を気にして、気づけば学校に通えなくなっていた。

中学2年生になった今、不登校を1年間続けた学校には、足が向かなくなってしまっていた。

毎日毎日、私は空の写真を撮っていた。

あの空を自由に飛べたなら。

私ももう少し成長できるのではないか。

勝手に、そう考えていた。

私には、勇気がなかった。

空の写真を撮影するために訪れた公園の自販機でオレンジジュースを買う。

早く学校に行けるようにならないと…。

気持ちは焦るが、行動に移せない。

ため息を吐いた。瞬間。

「本間優菜(ほんまゆな)…さん…であってたよね?」

後ろからそう声をかけられ、驚いて振り返る。

そこには、長い金髪を風になびかせた美人な女子中学生がいた。

なぜ女子中学生だとわかるのかというと、自分と同じ中学の制服を着ていたからだ。

混乱して言葉を見つけられないでいると、その人は嬉しそうに笑って「私、佐久間碧(さくまみどり)!よろしくね!」と言って右手を差し出してきた。

意味が理解できず戸惑っていると、私の右手を強引に掴み、上下に振った。

佐久間碧、というと、学校での人気者だ。

私とは正反対。

このフレンドリーなところが人から好かれる要因なのだろうか。

「何してるの?」

裏表のなさそうな笑顔で、佐久間さんは私のカメラを見ながら言った。

「あ…空を…撮っていたの…」

同年代の人と話すなんて、弟以外では久し振りだ。

きちんと声になっているだろうか。

「空?本間さん、空が好きなの?」

その質問に、頷いて『YES』と答える。

「そっか。いつもここに来てるの?」

「だいたい…。お、同じ場所でも…その時間によって空は変化するから…」

「そうなんだ。改めて空を見上げるっていうのもいいね。ね、LINEやってる?」

佐久間さんからの言葉に驚く。

これは『LINE交換しよ』と繋がる言葉ではないだろうか。

しかし、普通初めて話したばかりで、不登校の私なんかと仲良くしたいと思うだろうか。

「やっ…てるけど家族としかやってない…」

正直にそう言うと、「じゃあ交換しない?私が友達第1号だ」と返ってきた。

そのままLINEを交換し、佐久間さんは帰って行った。

どうせ数友だろう。連絡なんて来るはずない。

そう思っていたら、『今度遊んでみたいんだけど無理かな?』とLINEが来た。

佐久間さんと友達になれた気がして、すごく嬉しかった。





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