あの空を自由に飛べたなら
進展




「綺麗…」

「そうでしょう?」

部活の時間、遥先輩に連れてきてもらった屋上で空を撮影する。

「ここは学校で一番空に近い場所だよ。だから僕はとても気に入っているんだ」

「そうなんですか…。私も…気に入りました」

「そうだろうと思った」

そう言ってふんわりと笑う遥先輩に、心が暖かくなる。

遥先輩のことが好きなのだ、と自覚してから、なんだかときどき、きちんとお話ができているかどうか不安になる時がある。

「優菜ちゃんは、どうして空が好きなの?」

空を撮影しながら、遥先輩が質問してきた。

「そうですね…。全てを…許してくれるような…そんな大きさが好きなんだと思います」

そう言うと、遥先輩の視線がカメラからこちらに移った。

目が合った瞬間、気恥ずかしくて逸らしてしまったけれど。

「へぇ…。僕もだ。同じ理由だよ」

そう言って、またふんわりと笑った。

空が好きな理由。

以前までは確かに今言ったことが大半を占めていた。

でも今は―。

遥先輩との共通点だから。

言えないけれど、心の中で呟いてみる。

遥先輩にこの気持ちを押し付けるつもりはない。

だけれど、碧ちゃんの言った「誰のものでもない」というセリフを思い出す度、私にもチャンスがあるんじゃないかと思ってしまうのだ。

「遥先輩は…進路、もう決まってるんですか?」

そう聞くと、困ったような表情で、「志望校っていう志望校が今のところないんだよね。僕は写真が撮れればどこでもいいんだ」と言った。

遥先輩は3年生で、今は6月とはいえ、春には卒業してしまう。

胸が締めつけられた。

「そうだな…。優菜ちゃんが受ける高校を受けよう」

「え?」

遥先輩の突然の発言に、間抜けな声が漏れる。

「優菜ちゃんが受ける高校を受けたら、2年間だけどまた一緒に写真が撮れる。あ、僕が留年すれば3年間か」

あまりに真面目な顔でそう言うものだから、私は慌てて「何言ってるんですか!留年なんてやめてください!」と止める。

「同じ高校ってところは何も言わないんだ?」

ふんわりと笑いながら問う遥先輩に、墓穴を掘ったことに気づかされる。

「は、遥先輩の進路ですし…私と同じところでも構わないなら…いいんじゃないですか…?」

小さな声で、だけれどもはっきりと答えると、あのふんわりとした笑顔で「じゃあそうしよう。受ける高校が決まったら教えてほしいな。できるだけ早く、ね」と、遥先輩は言った。

私は、顔が熱くなるのを感じて、カメラを空に持っていくのをやめ、俯いてしまった。

赤くなった頬を、見られたくなかった。





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