あの空を自由に飛べたなら
たったひとつの勇気




いつものようにいつもの公園で空の写真を撮る。

空はいつだって偉大だ。

「あれ?君も空を撮ってるの?」

という声が聞こえて振り返る。

そこには、同い年くらいの男の子がいた。

カメラを持って。

「はい…、そうですけど…」

「あまり見かけない人だね。僕は中田遥(なかたはるか)。よろしく。君は?」

「あ、私は本間優菜です。よろしくお願いします」

「僕はね、空を撮るのが好きなんだ。この公園には初めて来たんだけど、君も?」

中田遥と名乗った少年は、私のカメラを見つめながらそう言った。

『空を撮るのが好き』

同じ理由で写真を撮っている人に出会ったことで、少しだけ興奮する。

「あ、あの!私も空を撮影するのが好きで、それであの…その制服うちのだと思うんですけど、何年生ですか?」

声をかけられたときから気になっていたことを聞いてみる。

信吾が着ているのと全く同じ制服を着て、彼はこの公園にきていた。

「僕?3年生だよ。写真部なんだ。それも部長。気が重いものだよね。君は?3年生じゃないのは確かだよね」

ふんわりとした笑顔で問われ、「2年生ですけど…学校、行けていません…」と答えた。

すると、中田先輩は「ふむ」と言いながら顎に手を乗せて言った。

「そんなこと、こんな大きな空の下で何か問題あると思うかな?僕は君の話し方から、"学校に通えるようになりたい"って気持ちを受け取った気がする。違ったら申し訳ないんだけれど。でも、今の状態に満足しているようには見えないのは確かだ」

その通りだ。私は学校に通えるようになりたい。

要はきっかけが必要なのだ。

「君も空を撮るのが好きなんだね。学校に来れるようになったら、写真部に入らない?」

「え…」

「空ばかり撮っているのって僕だけで、話し相手がほしいなと思ってたところなんだ。えーと…君のことは何て呼べばいいかな?」

「えっ?優菜で構いません」

そう返すと、またふんわりとした笑顔で、「優菜ちゃんね」と言った。

「じゃあ僕のことも遥でいいよ」

「遥…先輩?」

「うん。そう呼んで」

「はい」

その日は、遥先輩と空について語った。

流れゆく曇と太陽、真っ青な空だけが、私たちを見ていた。




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