追憶の彼方に

✩✩波瑠サイド


波瑠······

俺は、びっくりした‥‥
自分の不甲斐なさに、
膝の上の拳は震えていた。

「お恥ずかしい所を、
数々お見せして申し訳ありません。
その上、一華を助けて頂いて
ありがとうございます。

一華は、結城さんのような方と
一緒になるのが、幸せなのかも
知れません。
でも、すみません。
俺は、どうしても
一華を手放せません。

俺は、一度だけとはいえ、
一華以外の女を抱いたことで
もう、一華の側にいる資格は無いと
諦めていました。
ですが、一華と再会して
やはり俺は、一華でないと
ダメなんだと、はっきりわかりました。

俺から、
一華を‥
両親を‥‥
奪った、紗良が憎くて
復讐をしていました。
浅はかな、考えで‥‥‥

一華と会えて愛する人が、
側にいるという事は、
何者にも変えがたい
幸せだとわかりました。

だから、紗良にも
愛する人と幸せに
なって貰いたいと
思っています。

結城さん、
本当にありがとうございました。」
と、頭を下げ伝えると

結城課長は、顔を歪めて
「俺が、背中を押すなんて。
でも、一華が幸せになるなら。」
と、笑ってくれた。

俺は、今度こそ会社を後にして
一華のマンションへ向かった。
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