彼女にもう一度
その晩、夢を見た。



そこは一面真っ白な空間。
喪服に身を包んだ男が僕の前に立っている。
深く被った黒い帽子のせいで顔はよく見えない。



彼はこんなことを言った。


「君が捨てた思い出を、もらいにきた」



突然彼の前に、ココと一緒に眺めた風景が次々と現れる。
そういえば昔行った気がする場所ばかりだった。
すっかり忘れていた、小さな小さな思い出達だった。



「……だめだ!」


僕は叫ぶ。


「ただ忘れていただけだ、捨てたんじゃない!!」


だが男は全く動じる様子を見せることなく言う。


「いらないから忘れていたんだろう」


「違う!」


「そして君はこれからもっと忘れていく」


そう言うと男は僕に背を向けて去っていった。思い出達が彼に付いていく。


引き止めようとしたが、何故か声が出ない。
体も動かない。


ちくしょう!!と声にならない叫び声をあげようとしたそのとき、


「誠!誠!大丈夫!?」


横で寝ていた怜奈に起こされた。
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