終われないから始められない


弘人は私より一つ年上。
高校を卒業して就職して、社会人としても先輩。

車屋さんに勤めてる。
整備士?て言うんだっけ。修理とかする人。

毎日、車の色んなパーツを弄ってるから、手がオイル臭くなるって気にしてる。
でも好きなことで仕事が出来てるから楽しいって言ってた。

弘人は背が高い。
182cmある。私とは20cmも違う。

中学で初めて見掛けた時なんか、うわー、おっきいって、思わず言ってしまった。

おまけに顔だってすごくかっこいい。
眉も目も鼻も口も、ぜーんぶ綺麗。
すっきり整っていて、きっと出逢った頃から好きだったと思う。

口数が少なくて、少し照れ屋で、からかわれると耳が一気に赤くなる。

身体が大きいせいかな、包み込んでくれるような安心出来て穏やかな雰囲気がある。



14歳の誕生日。
何が欲しいなんて言ってない。
聞かれてもない。

急に電話がかかって来た。

「今から祐希んち行くから、20分後くらい。
ちょっと家から出られるか?」

「うん、犬の散歩のふりして出て来るよ。
ジョンにつき合ってもらうから大丈夫」

何だかドキドキする。


「ねえ?ジョン。行くよ。
お願いだから元気に吠えたり飛びついたりしないでよ?」

家を出てどんどん歩いてく。


「祐希〜!」

自転車に乗った弘人が、大きな箱を片手で抱えて段々近付いてくる。

「弘人!」

「ほら。これ、やる。大丈夫か、持てるか?」

「えー、おっきいよ?」

「だな。誕生日だろ?
おめでとう。

祐希…」

一瞬の事だった。

もたもた大きな箱を持ち直していたら、自転車に跨がったままで腕を引かれた。
お互いの体と体でプレゼントを抱えたみたいになった。

弘人の唇が私の唇に掠るように触れた。

あ…。

「…じゃあな」

あっ、弘人。耳、赤くなってる。

あっという間に帰って行った。

「あ、これ、ありがとうー」

聞こえたかな…。

「…ねえ、ジョン?私、今キスしちゃったのかな…」

当然返事はくれない。

…嘘?キャー!
今更、照れる…XXX。


何だかボーッとして、フワフワして、帰り道記憶が無かった。

ジョンは、ちゃんとジョンのお家に繋がれてた。

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