淡く儚い恋物語 Ⅱ ~貴方との夢~



「3時50分に海や相楽や蒼が車飛ばしてこれると思うか?」




「…思いません」




「…はぁ」




めんどくさそうに深い溜め息を吐いた後、私の前髪をクシャっと撫でる悠雅の手






「…お前が起きてたら俺の車でも良かったけどな」







あぁ



この続きは聞かなくても分かる





「……ありがとう」






私を後ろの座席に寝転がして、悠雅が運転すれば何の問題もない





私もそれで怒ったりはしない…
むしろ起こさないでくれて感謝すべき








でも、それじゃあ悠雅が嫌なんでしょう?








自分で言うのは恥ずかしいけど、きっと



貴方に「なんで私を後ろに寝かせて運転しなかったの?」と聞けば







『自分の女を不安定な座席に一人寝かせておけるか』









そう答えるんでしょうね








「…ふふ」




「…気持ちわりぃ」






仕方ないじゃない




嬉しくて頬が緩むんだから





「ふっ…」




…ダメだ

そろそろ笑いを堪えないと、悠雅にドン引きされかねない







「……っ」






口を両手で抑えて我慢していると






「お前はいつまで気持ち悪く笑ってるつもりだ」






呆れた顔をした悠雅の顔が私の顔を覗き込む






「ダメッ、顔緩んでる!」






反抗する私の力など、悠雅にとっては子供の力同然の様に軽々と捕まれ退けられる









「何がおかしいのか分からないが、笑いが止まらないなら塞いでやる


おとなしく黙って寝とけ」









そう形の良い唇で低く呟いた後、




「…ふっ…」







同じ唇で私のそれに熱を与えた







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