蜜愛フラストレーション


さて、例えばバレンタイン。予算以上の物をホワイトデーの際に期待するのは、女性ならば少なからずあること。

ただ私の身近には、三千円程度の元手で数十万円ほどのお返しをゲットするような強者がいたのだ。

ホワイトデーでそうなのだから、彼女の誕生日には目を疑う金額の品へと大幅にランクアップする。

お相手が外資系トレーダーという職業柄、金銭的に問題はない。が、傍観者の一般人には驚きの連続だった。

なお、彼女のほうも抜かりはない。プレゼントを貰えばすぐさま彼に感謝を込めた直筆の手紙を渡していたのもそう。


『彼っていつも手紙に感動して泣いてくれるの。良いよね、そういう単純な純粋さって。
つまり、愛情が物に化けるってこと。——アンタも少しは努力したら?陰日向とか、人生損してるって』

もはや当たり前のように主張する彼女。貶されてもドン引きしていた私。——あまりに正反対の性格をしていたのだろう。

貰ったばかりの某ブランドのアクセを眺めながら、黒い笑みを浮かべていた彼女の打算ぶりも今となっては懐かしい。

結局その男性とは別れ、エリート商社マンと交際3ヶ月でスピード結婚。現在は赴任先のドイツで子供も生まれ、とても幸せそうだ。


『今思えば、お金に目が眩んでたのね。いい人生勉強したわ。うん、若かったね〜』

何より、母となった彼女は変わった。当時について笑い飛ばせる心の強さと、楽天的な性格はそのままである。


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