bitter and sweet-主任と主任とそれから、私-
別れは涙を見せずに

10日程経った土曜日の夕方、私は会社から少し離れた昔ながらの喫茶店で唯野主任と向かい合って座っていた。



結局、あの喧嘩の翌日から唯野主任は私から逃げるかのように神部君を引き連れて健康万博の現地スタッフとの打ち合わせのためミャンマーに現地入りした。


昨日深夜遅くに帰ってきたようで、私は今朝早くにメールで連絡があって、この喫茶店に呼び出された。





シトシトと雨が降っている窓の外を眺めながら、もう湯気も出ない少しぬるくなってしまったコーヒーを一口だけ喉に流し込んだ。



いつもはブラックコーヒーなんて飲むことはないのに、こんな答えが分かっていても気分の落ち込む話の時に、大好きな甘いコーヒーなんて飲む気持ちにはならなかった。


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