僕を愛した罪







「桐生くんはそこっ!」
と彼女に言われた僕は、彼女の隣に座りました。

目の前には白ご飯と、トンカツと、キャベツと、わかめと玉ねぎの味噌汁。

…誰かの手作りを食べるのは久しぶりですね。





「わぁ!
何だか家族になった気分だなぁ」


「……前園さん、気が早いです」


「えー?
だって桐生くんってあたしの彼氏でしょ?」





その言葉に、
「いただきます」を言おうとしていたであろう次郎さんと芽衣子さんが固まりました。




「きっ、桐生くんって愛ちゃんの彼氏なの?」


「いつから付き合っているんだ!?」




…彼女の言ったことが、どうやら信じられたようです。




「次郎さん、芽衣子さん。
それは違います。

僕と彼女は、クラスメイトです」


「桐生くんったら照れちゃってー」


「照れてません」




誰もいなかったら、色々他にも言えたはずですが。

目の前には彼女のご両親が座っています。

下手に変なこと言えません。

彼女を「愛ちゃん」とちゃん付けで呼ぶ時点で、
おふたりはどうやら彼女を溺愛しているようですから。

彼女を溺愛しているおふたりの前で変に口走ったら、
何が起こるかわかりませんから。








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