四神転送


「ごっそさぁ〜ん!!あー満足や。」
「お前…よくこんだけ食えるよなぁ。大食いの俺でもこんなには食わねぇぞ」

弾にとっての"満腹"はカレーライスで言えば4杯、牛丼で言えば5杯、ラーメンで言えば3杯に値する量。
これだけ腹に詰めても小柄な身体に脂肪が付かないのは女子にとって妬みの対象と言うことに弾は気付かない。

だが、謳花のそれは弾の容量をはるかに越えるのだ。
今謳花の机に積まれているのは、中身を抜かれた弁当の残骸。
数え間違いでなければ…その数、8箱。

いくらなんでも見ているコッチがゲップものだ。

「食べ盛りやさかい、しゃーないて」
「まぁ、謳花がそれで大丈夫なら良いけどさ。」

苦しい素振りも見せない謳花にアクビを一つし、再び訪れた睡魔に目を閉じかけたが…

「………あ。」
「あ?」

ふと何かを思い出し、謳花の裾を掴んだ。

「なんや?腹減りか」
「俺さ、なんか変な夢見たんだ。」

弾の言葉に「はちゃめちゃな夢か?」と至極楽しげに耳を傾ける。
聞く体制に入った謳花を確認すると、弾は少しずつ言葉を続けた。

「夢の中はさ、どこまでも真っ白な世界なんだ。暖かくも涼しくもない、ただフワフワとした世界。」
「へぇ。」
「そこで俺、どうしたら良いか解んなくてさ……ただボーッとしてたら、声が聞こえたんだ」
「どんな声?」
「………………覚えてない」
「っかー!!一番重要なところやないか阿呆!!」

自分の額をペシンと叩いて苦虫を噛み潰したような顔をする謳花に「悪ィ悪ィ」と苦笑する。

本当は今でもハッキリと思い出せるのだが、何となく躊躇ってしまった。
何故だか解らないが、話してしまうと全てが終わってしまいそうに思えたからだ。


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