結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
「私のお陰?私、なんかした?」
楓ちゃんはワケが分からないって感じで、目を白黒させている。
「楓が行きたいって言ってたフレンチレストランに行った時、斎藤次長と新田係長が現れたろ?そこでの会話が決定的な証拠になったんだよ」
「えっ?斎藤次長達、そんな話ししてたっけ?」
「丁度、楓がトイレへ行くって席を外した時だよ」
あぁ……そうだ!楓ちゃんが奥田主任とデートであのレストランに行った時、一輝と新田係長が来た。あのふたりは怪しいって連絡あったんだ。
楓ちゃんも思い出したのか「あの時に?」って声を上げる。
新田係長は、一輝が乗っ取りを企んでる会社に移れば、間違いなく取締が付く役職に就く事が出来ると言ったそうだ。
「一輝は、なんて言ったんですか?」
「何も言わなかった。でも、嬉しそうに笑って頷いてたよ。ショックだった……あの斎藤次長がアクセスを裏切ってたなんて……彼を信頼していたから、余計にね」
「そして、奥田主任はそれを本社に報告したんですね?」
「あぁ、常務に報告したら、引き続き斎藤次長を見張れって……それで僕が急遽、東京支社に異動になったんだ」
そうだったのか……
納得したのと同時に、また一輝が一段と遠くに行ってしまった様な気がして、寂しくて堪らない。
「さっきの会議室での会話で、向こうが行動を起こす時期が迫っている事も分かったし、この事を常務に報告すれば、いよいよだ」
「いよいよって?」
楓ちゃんが鼻息荒く奥田主任に訊ねると、彼は自信満々に答えた。
「斎藤次長の野望もここまで。いよいよ終わりって事さ」