結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】
社長の説明が終わるまで、雅人さんはとうとう一言も発する事はなかった。
トップセールスマンの彼が、まるで新人みたいに下を向いたままだなんて、こんなの絶対におかしい。きっと、何か理由があるんだ。
帰りの車の中で雅人さんを問い詰めると、彼のお母さんが入院したそうで、心配で仕事が手につかないんだと教えてくれた。
「お母様が?」
「あぁ、だから行きたくなかったなのに、蛍子が強引に同行してくれなんて言うから……ったく、いい迷惑だ」
……迷惑?まさか彼にそんな事言われるなんて思わなかった。だって、雅人さんは、仕事を頑張ってる女性は魅力的で素敵だって常に言ってたから。
だから私は必死で契約を上げ、彼に気に入られるよう頑張ってきた。そんな私を雅人さんは好きになってくれたんじゃないの?
激しく動揺し「ごめんなさい」と言うのが精一杯。
気まずい雰囲気のまま社に戻ると、すぐに一輝に呼ばれた。
彼のデスクの前に立ち、アポの内容を報告しようとしたら、真顔の一輝が「もっと近くに来い」と手招きする。
なんだろう?と思いながら彼の座っている横へ行くと「で、雅人はどうだった?」って小声で聞いてくる。
「どうだったって……どういう事?」
「アイツ、ちゃんと営業出来てたか?」
一輝の言葉に驚き目を見開く。
「何が言いたいの?」
「だから、雅人は営業マンとして、クライアントと問題なく話しが出来たかって聞いてるんだ」