結婚したいシンドローム=特効薬は…あなた?【完】

社長の説明が終わるまで、雅人さんはとうとう一言も発する事はなかった。


トップセールスマンの彼が、まるで新人みたいに下を向いたままだなんて、こんなの絶対におかしい。きっと、何か理由があるんだ。


帰りの車の中で雅人さんを問い詰めると、彼のお母さんが入院したそうで、心配で仕事が手につかないんだと教えてくれた。


「お母様が?」

「あぁ、だから行きたくなかったなのに、蛍子が強引に同行してくれなんて言うから……ったく、いい迷惑だ」


……迷惑?まさか彼にそんな事言われるなんて思わなかった。だって、雅人さんは、仕事を頑張ってる女性は魅力的で素敵だって常に言ってたから。


だから私は必死で契約を上げ、彼に気に入られるよう頑張ってきた。そんな私を雅人さんは好きになってくれたんじゃないの?


激しく動揺し「ごめんなさい」と言うのが精一杯。


気まずい雰囲気のまま社に戻ると、すぐに一輝に呼ばれた。


彼のデスクの前に立ち、アポの内容を報告しようとしたら、真顔の一輝が「もっと近くに来い」と手招きする。


なんだろう?と思いながら彼の座っている横へ行くと「で、雅人はどうだった?」って小声で聞いてくる。


「どうだったって……どういう事?」

「アイツ、ちゃんと営業出来てたか?」


一輝の言葉に驚き目を見開く。


「何が言いたいの?」

「だから、雅人は営業マンとして、クライアントと問題なく話しが出来たかって聞いてるんだ」


< 34 / 306 >

この作品をシェア

pagetop