恋とは停電した世界のようです
なめらかに蕩けゆく波のようなバラードを聴く






久しぶりー、と教室の中に挨拶が飛び交って
お土産の交換や近況報告がはじまる。

テンション高く抱き合う子たちの姿や
イヤホンを耳につけて机に伏せる男子の姿も見えて、
ストーブの周りにはスカートを短く切った女の子のグループが出来ていた。


「…で、写真の人が誰か確かめてないの?」

「確かめるまでもないよ。ぜったい妹じゃないもん」

売店で買ってきたポッキーをひろげて
わたしはニ週間前のことを心美に話していた。

うーん、と天井を見上げながら心美が小さく唸って

「でもさぁ、それ妹さんも使う部屋に置いてあったんでしょ?
だったら、やっぱり妹なんじゃないの~?」

「それはない」

「なんで?」

「だって…」

その理由が喉元まで出かけたとき、あの写真立ての中に並んだふたりを鮮明に思い出して
ますます悲しくなってしまった。

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