ベビーフェイスと甘い嘘
私と同じ歳のイケメン店長が来てからというもの、うちの店は妙に女性客が増えた。あからさまなアプローチは見ていて笑ってしまうほどだ。
しかし私は、店長の整いすぎている顔立ちと何を考えているか分からない冷たい雰囲気が、どうも苦手だった。
「柏谷さん。ちょっと相沢と打ち合わせがあるので店を任せてもいいですか?」
『いいですか?』って一応聞いてくれてはいるけど、その目は『土曜日は暇だから、一人でも大丈夫だろ?』と言っている。
「はい、大丈夫ですよ。ごゆっくりどうぞ」
私もにっこりと笑いながら返事を返す。
揚げ物だってまだ揚げていないし、店内の品物の補充だって済んでいない。正直ごゆっくりしてもらっては困るのだけど、それは顔には出さない。
「茜さん……私、店長と『ごゆっくり』したくないんですけど……」
初花ちゃんが半べそをかきながら、私に助けを求めるように視線を向ける。
残念ながら、ただのスタッフには何も言う権利がないのよね。……それに、これはあなたが選んだ仕事ですよ。
心の中でそう思っても、やっぱり顔には出さない。
「気持ちは分かるけど、変わってあげられないからねぇ……。いってらっしゃい。頑張ってね」
なるべく優しく聞こえるように言葉をかける。
……心にもない言葉を並べながら。
そう。私は嘘つきなのだ。