ベビーフェイスと甘い嘘

俺のこと、男として見てよ


「ただいま」

20時近くになって、やっと修吾と翔が帰って来た。


『いつ頃帰るの?』『晩ご飯はどうするの?』

何度かメールを送っていたのに返信はなく、『今から帰る』と返信が来たのは、19時を過ぎてからだった。


「お帰りなさい」


そう声をかけた私に、二人は返事も返さず無言のままだった。


修吾が無言でも特に気にならないのだけど、翔の様子がおかしい。

泣きそうな顔で唇を噛み締めていて、よく見たらあちこち引っ掛かれたような傷もあるし、着ていたTシャツの首もとが伸びていた。


「ちょっと、翔!どうしたの?!」


そう声をかけても目にいっぱい涙を溜めたままで黙っている翔に、修吾がため息をついた。



「こいつ、悠太と喧嘩したんだよ。翔が悠太に掴みかかったんだ」


「……えっ」



その言葉に驚く。



翔はのんびりとした性格で、何か嫌なことがあっても怒り出す前に、心の中に溜め込んでしまう。


自分から喧嘩をするなんて、今まで一度も無かったのに……
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