ベビーフェイスと甘い嘘

こんな時まで要領がいいんだから……まぁ、こんなに早く出産になるなんて、芽依も予想してなかったんだろうけど。


「拓真(たくま)だよ、茜ちゃん。抱っこしてあげて」


私達がかけつけた時には、もう赤ちゃんは芽依の横にいて、ベビーコットですやすやと眠っていた。


三週も早い出産だったけど、少し小さいかな、と感じるくらいの大きさだった。何の問題も無く出産して、赤ちゃんも保育器に入らずに済んだのは運が良かったのかもしれない。


「あかちゃん、ねてるねー」
「かわいいねー」


翔と亜依はコットの横にべったりと張り付くようにして、ずっと赤ちゃんを見ていた。


近づいてそっと抱き上げる。


ふにゃふにゃとして、柔らかくて、小さくて、頼りない。


でも、なんて温かくて、愛しい存在だろう。


「……おめでとう。芽依」


愛しい体温を腕に感じていたら、自然と『おめでとう』と口にすることができた。


「ありがと、茜ちゃん」


芽依は私が二人目の子どもを欲しがっていたことを誰よりも知っている。


だから、自分が先に妊娠したのを口には出さないけど、気にしていたことは気がついていた。


『ありがと』と言ったその顔はほっとしているようで、何だか泣き出しそうな表情に見えた。
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