ベビーフェイスと甘い嘘

ベビーフェイスと甘い嘘




***


「奢ります!」


にっこりと笑いながら、私の先を歩く初花ちゃん。


その視線は、もう目の前のショーケースに釘付けになっている。



「この前とは逆ね」



その熱い視線に苦笑いしながら、私もパンを選び始めた。


朝日勤終わりの昼、初花ちゃんに誘われて私達は初花ちゃん行きつけの『MilkyWay』と言う名前のカフェに来ていた。



「……茜さん、カフェラテですか?」



パンを選んだ後、カフェスペースで初花ちゃんと同じカフェラテを頼むと、あれ?と驚いた様子で初花ちゃんが確認してきた。



「うん。カフェラテでいいの。……もうカフェイン摂っても大丈夫だから」



おととい、ようやく止まっていた生理が来た。


ここ数日のだるさや腰の痛さは、疲れているからじゃなくって、忘れかけていた生理の前兆だった。


ちゃんと自分の身体は"女"として機能している。そう思うだけで、下腹のキュウとした独特の痛みすら愛しく感じてしまう。



食欲だって、今目の前に運ばれてきた『Milkyway』のパンとカフェラテの食欲をそそる香りに、グゥとお腹の虫が音を立てるくらいには順調に回復してきている。


初花ちゃんも、数日前と比べてだいぶ明るい顔色になってきていた。


源さんが倒れて、最初は落ち込んでいた初花ちゃんだったけど、源さんが順調に回復している事もあって、安心したようだ。



ーー 昨日、鞠枝さんから初花ちゃんが自分の所に来たと報告を受けていた。


自分の身に起こった色々な事に、きちんと向き合って心もだいぶ落ち着いたんだろう。


初花ちゃんは、4月からの相澤店長と再会してからの出来事を、過去を含めて全て打ち明けてくれた。


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