したくてするのは恋じゃない
ぼっ。…余計熱が増しそうなんですけど。
ゆっくりと冷ましながら食べる。
いい感じにあったかい。
マスターまで…、猫舌なんて、観察されてるな…。
まあ、長く通って、その度食べて飲んでの繰り返しをしてるんだから、自然に解ることだな、きっと。
丁度いい量だった。
今日に限らず、いつもだ。
私の胃袋はすっかり掴まれてる気がする。
味にしろ、量にしろ。
超人的。
「絵里子ちゃん、送ってくよ」
「えっ、そんな、マスター、まだお店だって…」
閉店時間じゃない。
「いいの、いいの。月曜だし、もう、これから来客は少ないから」
「えっ、でも…」
「ゆっくり食べてて?僕も片付けちゃうから。
ゆっくりでいいからね」
結局、送っていただいている。
「夜も涼しいくらいになって来たね。寒くない?」
「はい、大丈夫です」
「でも一応ね」
羽織っていたカーディガンを掛けられた。
「…有難うございます」
「あ、嫌じゃなかった?」
「とんでもない、嫌だなんて。そんなこと絶対ありません。
本当に、お気遣い有難うございます」
「いいえ。大事な人に何かあってはいけませんから。
事、前、に、対処しなくては、ね」
「着いてしまいましたね…」
カーディガンを返そうと手を掛けていると、そのまま着ててください、
と言われ、おでこにおでこがコツンと当たった。
「本当はおでこに手を当てたって、こうしておでこを当てたって、確かな体温なんて解りません」
え?
「親子ならともかく、男女でこんなのは、…相手に触れたいからに決まってるじゃないですか」
えっ、えーー。
「でも一応…。熱は大丈夫そうですねって事で。それから……おまけ…」
「おまけ?」