〜愛が届かない〜

もう、何がなんだかわからない。
今日の溝口さんは変だ。

いつもなら思わせ振りな言葉を楽しんでいるのに…今日会ってから何度ストレート過ぎるセリフを言われたんだろう⁈

最後の思い出の日にそんなことを言うなんて残酷だ。

シラフであなたと身体を重ね、名を呼ばせようとするなんて…

きっと、鮮明に脳裏に残る夜になる。
あなた以外の違う男に抱かれても、いつまでもあなたと比べて前に進めないだろう。

どれたけ私をあなたに夢中にさせるの⁈

訳のわからない感情が溢れて、頬を涙が伝う。

「どうして泣いているんだ?」

「……わかんない。わかんないよ」

彼の胸にうずくまり、肩を何度も叩いた。

彼女なら嬉しい言葉ばかりなのに…
私は、あなたの彼女じゃない。

好きなのに
愛してるのに…
セフレという関係が私を苦しめる。

私の背と頭を泣き止むまで優しく撫でてくれる。

嬉しいのに…辛いの。
優しくしないで…
と願いながらその手を離したくないと思う。

やっぱり‥私は壊れ始めている。

割り切った関係
欲望を吐き出す関係だったはずなのに、

あなたの心が欲しいと欲が出て
今にも、
私のこと好き?
愛してるって言って
私を彼女にしてとすがりつきそうだ。

そんな姿をさらしたくない。

あなたには、いい女だったといつまでも思われたいのに…すでに泣きじゃくるという醜態をさらしてしまった。

止まらない感情
だけど、言葉を飲み込みこれ以上の惨めな私を見せたりしない。

涙を拭い

「泣いたりしてごめんね」

「……始めて見たよ。お前が泣いているとこなんて今までなかったから驚いた」

「だから、ごめんって謝ってるじゃない」

「謝るなって…これからもっとお前を鳴かせるんだから食べろよ」

最後のサンドイッチを私の口に押し込んだ溝口さんを睨んだけど…

意地悪く笑う笑顔にキュンときてしまう。

私って溝口さんのその顔が好きなのよね。

今日で最後

もっと、その顔を見せて…

マヨネーズのついた彼の指をぺろっと舐めた。

目を見開き驚いた彼だけど…
楽しそうに微笑んで
私の
唇の端から唇にそって
舐めとっていく。

もう…

結局、彼の方が1枚も2枚も上手なのだ。

意地悪く笑うだけでもときめくのに…
さらにキュンとくる行動をとるのだから…

「もっと…そんなんじゃ足りないの…キスして」

彼の首に手を伸ばした。

「欲張りだな…」

口角を上げ彼の唇が私の唇を味わいだした。
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