何度だって咲かせよう(仮)



(とは言ったものの…)

あれから、京香のノロケ話を散々聞かされ、最後には「絶対チョコ作ってよ〜!」と念を押され別れた。芽依子は帰路に着き、先ほどの話を思い出していた。

(きっと、みんなもあげるんだろうな…なんてったって冬桜の王子だもん。フられてなくのが目に見えてるのに、なんで涼子はあんなに自信満々なんだろう)

冷静になって考えると、やっぱり不安だ。ハーッとため息をついた。

「あれ、藤田?」

芽依子が振り返ると、悠馬がいた。

「桜田くん、司くんと帰ったんじゃないの?」

「あー、今日はバイトでさ」

「バイトしてたんだ。なんか買いたいものでもあるの?」

「ちょっと、な。もう暗いし、家まで送っていく」

そういうと歩き出す悠馬。芽依子が断わろうとすると、「これで藤田が襲われたら気分悪いだろ?」と言われ、大人しく送ってもらうことにした。

(あんな言い方して上手いな…)

話し方は淡々としていて、少しぶっきらぼうに聞こえるときもあるが、よく周りに気を配る悠馬がモテないわけがない。

そこまで考えた芽依子は自分の胸がチクリとしたことに気づいた。そして、この気持ちに嘘はつけないのかもしれないと感じた。



「……藤田はさ、バレンタイン、誰かにあげるのか?」


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