幽霊の影
回想
「あの子、幽霊みたいだよね」



小学4年の、2学期が始まって間も無いある日の事であった。


同じクラスの友人たちと帰宅途中、何の事からか、1人の女子児童の存在が話題に上った。



私の先の問い掛けに、みんなが口を揃えて賛同する。


「そうそう。

いつも下向いてて、なんか暗いよね」


「全然しゃべんないしね」


「それにあの髪!

こないだトイレで鉢合わせたとき、本当の幽霊かと思ってびっくりした」


「でしょ?だからさ……」


そう言って、私は友人たちの顔を順番に見回した。


「今いい事考えたんだけど、今度から幽霊って呼ぼうよ。


でも本人には気付かれないようにね。

幽霊って誰?って訊かれても絶対言っちゃ駄目だから」


私の提案は、またしても友人たちの賛同を得た。



あだ名が付いた経緯は、確かこんな事であったと記憶している。



幽霊はいつも一人ぼっちだったが、いじめに遭っていたわけではなかった。


少なくとも、いじめているという意識はこちらには無かった。


私たちはただ、幽霊みたいな者を幽霊と呼んでいただけで、別に暴力を振るったり物を盗ったりしていたわけではなかったのだ。


例えば、友達とおしゃべりをしていて話題が尽きたとき、幽霊の事でも小馬鹿にしておけば何となく間が持つ

私たちにとって、彼女の存在はその程度のものに過ぎなかった。



その状況が変わったのは、5年生の新学期

最初のホームルームの時間。
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