かまってくれてもいいですよ?
5月
入学から1か月しても、私はこちらでの生活に馴染むことができずにいた。
 
周りの1年生達はサークルに入り、毎日何かしら忙しそうにしていた。

先輩と親しげに話す同学年の姿もよく、見かけるようになっていた。

私はと言えば、特にサークルから勧誘される訳でもなければ、誰かから「一緒に入ろう」と声をかけてももらえず、気になるサークルもいくつかあったものの、「入れて下さい」と言う勇気もなかった。
 
大学のどの団体にも所属をせず、決まった友人も作ることができず、私は内心焦っていた。

1人でも大丈夫な子、クールな子、群れない子。

そんな風に言われていた時期も昔はあったけれど、私は全然大丈夫なんかじゃない。
 
実家暮らしならまだいい。

住み慣れた地元でなら構わない。

けれど、見知らぬ土地で知り合いもいないまま暮らし続けるのはあまりにも心細かった。

それでも積極的になれなかったのは、今までの18年という短すぎる人生の中に、溢れかえらんばかりの失敗があったからだ。

(一姫ちゃんって、接し方に困るよね)
 
たとえ私が友達だと思ったとしても、たとえ私が好きになったとしても、相手が同じ気持ちでいてくれるとは限らない。

そう分かった時から、どうしても相手の顔色を窺いがちになってしまった。

それでいて自然な振舞いだなんてできるはずもなく、私は結局ここでも上手くやっていけないのかもしれない。
 
携帯を開くと、通信制高校時代の友人たちと撮ったプリクラが待受に表示された。

彼女たちは皆、専門学校へと進学した。

本当は私だって一緒に進学したかった。

けれど、親からも先生方からも、「あなたは大学へ行きなさい」と猛反対を受け、身の丈に合ったここへ入学を余儀なくされた。
 
――心細い。
 
ただそんな気持ちがズシリと肩にのしかかっていた。

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