夜空〜ヨルゾラ。〜
〜柚羽side〜

ピーッ
プルルルルルルーッ

聞き慣れた笛の音と、電車が発車する音。
ゆっくりと走り出した電車。

「ねー、ゆず?」

「んー?」

「ゆずはさ、恋したい、とかないの?」

「…突然、どしたの?」

「いや、だってさ、初恋もまだなんでしょ?なんか、タイプとかないの?」

「タイプ、かぁ…」

うーんと考えてみる。

「目を奪われる人、かなぁ。」

「目を奪われる人?何それ?」

「なんていうんだろ、こう…。」

ふと、顔をあげると。


そこに、いたんだ。
圧倒的な存在が。


「…あ。」


その声に気付いたのか、彼が顔をあげた。


カチリ。


何かの音がする。

彼から目を逸らせない。
彼もまた、私から視線を外さない。

時が、止まった気がした。


「ゆず?」

楓の声にハッとして、彼から目を逸らす。

心臓、うるさい。

「どうしたの?具合悪い?」

「う、ううん。大丈夫。」



これが私の初恋の始まり。
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