放課後コイ綴り




ふたり分しか載らない部誌は以前と比べるとずいぶん薄く、切なさを募らせる要因になる。



彩先輩たちの思わず笑ってしまうようなコメディ、わくわくするようなファンタジー。

洋風・和風・中華のどれでも書くことができる人がいたから、バリエーション豊かで魅力的な部誌だったのに。



「相原?」



伺うように名を呼ばれて、自然と下がっていた顔を上げる。

はっと気づけば、さっき出した紙の分は印刷が済んでいる。



コピー機にB5の紙を挟んで、位置やインクの濃さを調整するのは一条くん。

わたしはB4の紙を枚数分だけ設置する係。

いつもの役割分担はふたりでやっているせいで、ひとりが動かないとちっとも作業は進まない。



「ごめんね」

「別にいいけど」



不思議そうにしつつも、慌てなくていいと言ってくれる一条くん。

そんな彼と一緒に部活をするのも、あともうわずか。



彼は卒業後、どこに行くんだろう。



わたしも一条くんも受験は推薦で済ませている。

そうじゃなかったらこんな悠長に部活なんてしていられないしね。



だから合格していることは知っているけど、それでも学校は訊いていなかった。

……別れを意識することが、こわくて。



だけど、知らないままでいることもこわい。






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