放課後コイ綴り




乾いた指先が紙の上を滑る。

入部した頃は苦手だったこの作業もずいぶんと早くなったと思う。



……入部した頃。

この部室にもっと人が溢れていた、あの愛しい日々の始まり。



わたしと一条くんが出会ったのは、入部が確定したあと。

新入部員歓迎会の顔合わせの時で。



このために借りた多目的室に足を踏み入れれば、机をいくつもくっつけて周りをぐるりと囲む椅子。

1年生はそこに座って、なんて見知らぬ男の子……一条くんの横に座らされてすごく緊張したんだよね。



先輩たちが用意してくれたお菓子やジュースを口にしながら、ゲームをしておしゃべりを楽しむ。

自然と緊張がほどけてなくなるのが自分でもわかった。



それでも、口数の少ない一条くんとは会話が弾まなかった。



それは、毎週月曜日と木曜日。

文芸部の活動日に顔を合わせたり、ふたりきりになるようになっても……今だって変わらない。



わたしたちの間には、すぐに沈黙が落ちる。



それなのに、どうしてかな。

言葉を扱うわたしたちなのに、それがなくても同じ部屋にいるだけで、通路を挟んで隣に座るだけで心地よかった。

そんなことは初めてだった。






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