無口なセンパイに恋した仔羊
その日を境に、進藤さんを見る目が変わった。

仕事中は、勿論さっきみたいに必要最低限の言葉しか発さない。困る事は多いけど、会話のキャッチボールを長く出来てると思えば、苦にはならない。

「…毎日あんな会話しかしなかったら疲れるでしょ、美鈴」

同じ部署の同期の井上小春が私に言う。

私は真顔で首を振る。

「そんな事ないよ。まぁ、最初は困る事もあったけど、今は何が言いたいのか、どうして欲しいのか、分かるようになってきたし」

私の言葉に、小春は溜息をついた。

「進藤さんの同期とかも、やりにくいって言ってるのに、凄いわね。…あの人と対等に渡り合えるのは、あんたと…あ、もう一人いた」

「…え?」

小春が顎で指した先に、納得出来る人物が1人いた。

園田 綾人28歳。進藤さんの同期にして、親友?と言えるほど仲が良い。

進藤さんは度々鬱陶しそうにしているけど、綾人さんは気にしてない。正反対な2人。

…え?なんで綾人さんって呼ぶのかって?

綾人さんに、そう呼べって言われたから。っていうだけの理由なんだけど。
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