異聞三國志
何せ性格上 自分が全ての決裁をこなさないと気が済まないのが、孔明であったのでその仕事を譲らせるのは困難を極めた。

そして、孔明を死に追いやった病が何であるかも気になっていた。何よりも喀血したことのある孔明であるから、やはり結核を疑ってやまない士郎であった。


“結核というとやはり・・・、抗生物質だが・・・。だがまてよ・・・。周りにだれも感染したような様子がない・・・。違うのか・・・。”

医者ではない、士郎であったので、困難であった。


“先ずは、決裁の件を片付けよう”


意を決した士郎は、孔明に面会を求めた。


「閣下に申し上げたき儀がございます」


「なんじゃ」


「私思いまするに、閣下は臣下を信用しておられぬご様子。」


「何をいうのじゃ。私は貴公らの仕事は評価しておる。」


「でしたら、何故につまらないようなことの決裁までご自分で成されるのです。」


「そ、それは・・・。私がそれをしないと落ち着かないからだ。畏れ多くもかの先帝の御遺志を継いで、中原を回復すること・・・、その思いが私を焦らせるのだ。」

「しかれども、そのような閣下の身勝手のために、臣下は信頼されているとは思えず、士気は上がらぬ始末。これを是とされるのですか?」

「うーむ。」

「それに我々の歴史によれば、閣下のお命を奪ったのは・・・、過労死つまりは働き過ぎです!」


「何じゃと!」

「閣下のお国のためにも御慈愛ください。」

孔明は黙りこんでしまった。


「決裁は蒋エン殿、費イ殿に任せら如何かと。彼らの仕事ぶりには私も感服いたしておりまする故。」

孔明は静かに頷いた・・・。

“しかし、これではまだ不充分だ。もう閣下は以前喀血しているのだ”

病魔は何なのだろうか?

士郎は考えこみながら、家路を急いだ。
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