彼女が虹を見たがる理由
恋の相手
そもそも、体調不良になれるって言うのはあまりよくない兆候なんじゃないだろうか?

そんな事を考えて村田さんの顔色をチラチラうかがいながら歩いていると、青白かった顔は徐々にピンク色の頬を取り戻して行った。

どうやら本当に大丈夫そうだ。

ホッとすると同時に、さっきから会話が途切れていることに気が付いた。

村田さんの家がどこにあるか知らないけれど、このまま無言で歩き続けるのは気まずい。

俺は話題を探して「あー」とか「えー」とか無意味な言葉を連発した。

昨日のドラマとか、最近話題になったニュースとか色々考えたのに、結局俺の口から出た言葉は隣のクラスの野間マサノという男子生徒の事だった。

「野間マサノってさ、変な名前だよな」

ノママサノ。

そのネーミングで男子だという事と大人しい性格のせいで、彼はよくクラスメートたちからからかわれていた。

外国人と見間違えるほどのキツイ天然パーマを伸ばし、クルクルの前髪で顔を隠してうつむいている野間マサノを、俺は何度も目撃していた。

野間マサノと唯一仲のいい本田は将棋オタクで、休憩時間の度に野間マサノの机に将棋の雑誌を持って行っては2人でボソボソと何か話していた。

そんな2人がいつもつるんでいるから、周囲は余計に彼らの事を敬遠しているようだった。
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