温もりを抱きしめて【完】
第1章

プロローグ

「、今なんて……?」


久しぶりに家族が揃った夕食の場。

大きな広間に父と母が隣同士で座り、私は2人の前に座っていた。

少し緊張感のある面持ちでご飯を食べていた中、聞こえた言葉に耳を疑った。




「だから、お前の婚約者が決まった」




相変わらず淡白な父の声。

冷たさを感じるいつもの目は、私を見ずにそう告げた。




「明日からお前は婚約者の屋敷で暮らすことになった」




お箸を持つ手が少しだけ震える。

喉もカラカラに渇いていく気がした。



母は、素知らぬ顔で食事を続けていた。

私が目を丸くして、手を止めてたって気にもしない。

そんな2人を見て思った。






あぁ。

ついに私は見捨てられるんだ、と。
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