温もりを抱きしめて【完】

募る想い

「緑が多くて気持ちいいー」


両手を伸ばして鼻からスーッと息を吸うと、森の匂いでいっぱいになる。

バルコニーから見える木々の緑は、見てるだけで癒された。



9月の連休に入り、私は要さんと一緒に西園寺家が所有する軽井沢の別荘へやってきていた。

毎年この時期は国内にある別荘で過ごしているらしくて、ちなみに去年は北海道だったみたい。

今回は間島さんや三上さんを始めとする、私たちの身の回りのお世話をしてくれる人を数人だけ連れてやってきた。


荷物の整理をしていると、コンコンとドアをノックする音の後に「三上です」という声が聞こえてきた。


「どうぞ」

「失礼します。いかがですか?こちらの別荘は」


お茶のセットを乗せたワゴンを押しながら入ってきた三上さんは、窓の外に目を向けながらそう尋ねてきた。


「空気が新鮮で気持ちいいですね。自然に囲まれてて、何だか癒されます」

「朝の散歩も気持ちいいらしいですよ?」

「そうなんだ。明日行ってみようかな」


私はソファに座って、慣れた手つきでお茶を淹れてくれる三上さんの手元を見つめた。


「今日の夕食はテラスでバーベキューをするそうです。夜になると気温も下がってくるので、羽織ものもお忘れになりませんように」



三上さんはそう言うと、スッとカップを差し出してくれた。


「いただきます」


ティーカップに手を伸ばした私は、淹れたての紅茶を口に含んだ。

彼女の淹れてくれるお茶は、今日も変わらず美味しい。

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